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ゴルディロックス効果

ゴルディロックス効果とは、複数の選択肢があるときに、極端な選択肢よりも「中間」の選択肢が選ばれやすくなることがある、という現象を説明する際に使われる言葉です。

例えば、商品に「低価格」「中価格」「高価格」の3つのプランがある場合、最も安いプランや最も高いプランではなく、中間のプランが選ばれやすくなることがあります。

このような傾向は、行動経済学や消費者行動の研究では「妥協効果(compromise effect)」という概念と関連づけて説明されることがあります。

ただし、「真ん中の選択肢が必ず最も売れる」という法則ではありません。

価格差、商品の内容、顧客の目的、ブランドへの信頼などによって、どの選択肢が選ばれるかは変わります。

 

なぜ「ゴルディロックス」と呼ばれるのか

「ゴルディロックス」という名称は、イギリスの童話『Goldilocks and the Three Bears』に由来します。

物語の中でゴルディロックスは、3つのおかゆ、椅子、ベッドなどを試し、「熱すぎる」「冷たすぎる」といった両極端ではなく、「ちょうどよい」ものを選びます。

この「極端ではなく、ちょうどよいものを選ぶ」というイメージから、中間的な選択肢を好む傾向を表す言葉として「ゴルディロックス効果」が使われることがあります。

ただし、この名称自体は、心理学における厳密な単一の理論名として統一されているわけではありません。

マーケティングやビジネスの文脈では、より学術的には「妥協効果」として説明される現象に近いと考えると分かりやすいでしょう。

 

妥協効果とは

妥協効果とは、複数の選択肢を比較したときに、ある選択肢が他の選択肢の中間に位置することで、選ばれやすくなる場合がある現象です。

例えば、次の3つの商品があるとします。

A:5,000円・最低限の機能
B:10,000円・標準的な機能
C:20,000円・高機能

この場合、Bは価格でも機能でもAとCの中間に位置しています。

顧客から見ると、Aは「安いが機能が少ない」、Cは「高機能だが価格も高い」というそれぞれのデメリットがあります。

その中でBは、両方の極端を避けた「無難な選択肢」として感じられ、選ばれやすくなる場合があります。

これが妥協効果の基本的な考え方です。

 

なぜ中間の選択肢が選ばれやすくなることがあるのか

中間の選択肢が選ばれやすくなる背景には、いくつかの心理が関係していると考えられます。

 

▽極端な選択を避けたい

最も安い商品を選ぶと、「品質が悪いかもしれない」と感じる場合があります。

一方で、最も高い商品を選ぶと、「そこまでお金をかける必要があるのか」と感じる場合があります。

そのため、その両方を避けた中間の選択肢が、「失敗しにくそう」と感じられることがあります。

 

▽選択理由を説明しやすい

人は、自分自身や他者に対して説明しやすい選択肢を選ぶことがあります。

例えば、「一番安いものでは不安だったが、一番高いものまでは必要なかったので真ん中を選んだ」という説明は比較的しやすいものです。

このように、中間の選択肢は判断理由を作りやすい場合があります。

 

▽損を避けたい

選択肢の違いが十分に分からない場合には、「安いものを選んで失敗したくない」「高いものを選んで払いすぎたくない」という両方の不安が生じることがあります。

その結果、中間の選択肢が心理的に安全に感じられる場合があります。

 

「松・竹・梅」とゴルディロックス効果

日本では、価格や品質の異なる3つの商品を「松・竹・梅」のように提示すると、「竹」が選ばれやすいと説明されることがあります。

この考え方は、ゴルディロックス効果や妥協効果と関連づけて説明されることがあります。

ただし、「松・竹・梅にすれば必ず竹が最も売れる」「売上比率は必ず一定になる」といった法則があるわけではありません。

例えば、価格差が小さければ高価格の商品が選ばれることもありますし、顧客が価格を最優先していれば低価格の商品が選ばれることもあります。

商品の違いや顧客層によって、選択の仕方は変わります。

 

マーケティングでの活用例

ゴルディロックス効果に近い考え方は、さまざまな価格設計に活用されています。

例えば、サブスクリプションサービスで次のような3つのプランを設定することがあります。

・ベーシックプラン
・スタンダードプラン
・プレミアムプラン

顧客は、それぞれの価格と機能を比較しながら選択します。

その結果、中間に位置するスタンダードプランが選びやすく感じられる場合があります。

ただし、企業側が売りたいプランを単に真ん中に置けばよいというわけではありません。

顧客から見て価格と価値のバランスが納得できることが前提になります。

 

商品やサービスを選ぶとき、人は価格や機能だけを機械的に比較しているわけではありません。

「高すぎないか」「安すぎて不安ではないか」「この選択なら後悔しにくそうか」といった心理も、判断に影響することがあります。

日本経営心理士協会では、こうした人の価値の感じ方や不安、意思決定の心理を、営業・マーケティング・提案に活かす「経営心理学」を体系化し、「経営心理士講座」でお伝えしています。

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選択肢は3つにすれば必ずよいわけではない

ゴルディロックス効果の説明では、「商品は3つの選択肢にするとよい」と言われることがあります。

確かに、3つ程度の選択肢であれば、比較しやすく、中間という位置も分かりやすくなります。

しかし、必ず3つが最適というわけではありません。

商品の性質や顧客の知識、購入目的によっては、2つの方が選びやすい場合もあれば、より多くの選択肢が必要な場合もあります。

重要なのは、顧客が違いを理解し、比較しやすい形にすることです。

 

選択肢が多すぎると選びにくくなることもある

選択肢が増えることで、顧客が自分に合った商品を見つけやすくなる場合があります。

一方で、選択肢が多すぎると、違いを比較する負担が大きくなり、選びにくくなることもあります。

このような現象は「選択過多」や「choice overload」などと呼ばれることがあります。

ただし、「4つ以上の選択肢があると必ず選べなくなる」といった明確な境界があるわけではありません。

選択肢の数だけでなく、それぞれの違いが分かりやすいか、顧客に十分な知識があるか、選択の重要度が高いかなどによって影響は変わります。

そのため、単純に選択肢を減らすのではなく、「顧客が比較しやすい状態をつくる」ことが重要です。

 

高く売りたい商品を真ん中に置けばよいわけではない

ゴルディロックス効果を利用して、「最も売りたい商品を中間に設定すればよい」と説明されることがあります。

しかし、顧客がその商品の価値を感じなければ、真ん中に置いただけで購入されるとは限りません。

例えば、低価格プランと中価格プランの違いがほとんどない場合、顧客は低価格プランを選ぶ可能性があります。

反対に、中価格と高価格の差が小さく、高価格プランの機能が非常に魅力的であれば、高価格プランが選ばれることもあります。

そのため、重要なのは「どこに置くか」だけではなく、「それぞれの選択肢にどのような価値を持たせるか」です。

 

価格差によっても選ばれ方は変わる

例えば、次の3つの商品があるとします。

A:9,000円
B:10,000円
C:30,000円

この場合、Bは中間価格ではありますが、Aとの差がわずかであるため、Bが魅力的に見える可能性があります。

一方で、次のような価格設定ではどうでしょうか。

A:5,000円
B:15,000円
C:16,000円

この場合、BとCの価格差が小さいため、「それならCの方がよい」と感じる人が増える可能性があります。

このように、単純に3段階に分けるだけでなく、各選択肢の価格差と価値の差を合わせて考える必要があります。

 

営業におけるゴルディロックス効果

営業でも、複数の提案を示すことがあります。

例えば、顧客に一つのプランだけを提示するのではなく、基本プラン、標準プラン、高機能プランなどを提示する方法です。

選択肢を比較できることで、顧客は「この価格でここまでできるなら、このプランが自分に合っている」と判断しやすくなる場合があります。

ただし、あえて高額なプランを置き、中間プランを安く見せることだけを目的にすると、顧客から不自然な価格設定だと感じられる可能性があります。

重要なのは、顧客の課題や予算に応じた複数の選択肢を示し、それぞれの違いを明確にすることです。

 

「中間だから安心」という心理だけに頼らない

ゴルディロックス効果は、顧客の選択を考えるうえで参考になる考え方です。

一方で、顧客が本当に必要としているものと合わないプランを、「真ん中だから」という理由だけで選ばせることは望ましくありません。

長期的な顧客関係を考えれば、顧客の目的や状況に合った商品を選べるようにすることが重要です。

例えば、高機能の商品が必要のない顧客に対して、「一番人気です」と中間プランを勧めるよりも、低価格プランで十分であれば、そのことを正直に伝えた方が信頼につながる場合があります。

 

ゴルディロックス効果から分かる「比較」の重要性

ゴルディロックス効果から学べる重要な点の一つは、人が商品やサービスの価値を単独で判断するとは限らないということです。

同じ10,000円の商品でも、5,000円の商品と比べれば高く感じ、30,000円の商品と比べれば安く感じることがあります。

つまり、人が感じる価値は、比較対象によって変わることがあります。

営業やマーケティングでは、「この商品にはこれだけの価値があります」と説明するだけではなく、顧客が何と比較しているのかを考えることも重要です。

さらに、価格だけではなく、「失敗したくない」「必要以上にお金を使いたくない」「自分に合ったものを選びたい」といった感情も意思決定に影響します。

日本経営心理士協会の「経営心理士講座」では、人が何と比較し、どのように価値を感じ、どのような不安や感情によって意思決定するのかを理解し、営業・マーケティング・提案に活かす方法を学びます。

単に価格を3段階に設定するだけでなく、顧客がどのように価値を判断するのかまで考えた提案を行いたい方は、経営心理学の考え方も参考にしてみてください。

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この記事の執筆者

藤田 耕司(ふじた こうじ)

一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

早稲田大学卒業後、監査法人トーマツに入所。独立後、日本経営心理士協会を設立。
高い成果を残す経営者・ビジネスマンの共通点を心理学的に分析し、人間心理に基づく経営・ビジネスの手法を経営心理学として体系化。経営心理学を用いて1200件超の経営改善を行う。
その成果の高さが認められ、金融庁や日本銀行でも教鞭をとり、日経新聞やダイヤモンド、東洋経済にも掲載される。

       
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