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コンコルド効果

コンコルド効果とは、すでに多くのお金や時間、労力を投じているために、その後の合理的な判断が難しくなり、本来であれば中止した方がよい状況でも投資を続けてしまう心理的傾向を指します。

経済学や意思決定の分野でいう「サンクコスト効果(sunk cost effect)」や「サンクコストの誤謬」と深く関連する概念です。

例えば、ある事業に多額の費用を投じたものの、今後の収益がほとんど見込めないと分かった場合でも、「ここまでお金をかけたのだから、今やめるのはもったいない」と考えて投資を続けてしまうことがあります。

しかし、すでに支払ってしまい、今後取り戻すことのできない費用は「サンクコスト(埋没費用)」であり、本来は今後の意思決定から切り離して考える必要があります。

重要なのは、「これまでいくら使ったか」ではなく、「これから追加でいくら必要で、それによってどの程度の成果が期待できるか」です。

 

なぜ「コンコルド効果」と呼ばれるのか

コンコルド効果という名称は、超音速旅客機「コンコルド」の開発計画に由来するとされています。

コンコルドは、イギリスとフランスが共同で開発した超音速旅客機です。

開発費が大きく膨らみ、採算性に対する懸念が強まる中でも、すでに巨額の資金を投入していたことなどから開発が継続されました。

ただし、コンコルド計画について、「採算が合わないと分かっていたのに、過去の投資だけを理由として最後まで開発を続けた」と単純化することには注意が必要です。

実際には、国家的な技術開発、外交、産業政策、雇用、 prestige(威信)など、さまざまな要因が関係していました。

また、コンコルドは開発途中で中止されたわけではなく、1969年に初飛行し、1976年から商業運航を開始し、2003年まで運航されました。

そのため「コンコルド効果」という名称は、巨額の先行投資が意思決定に影響する象徴的な例として使われていると考えるのが適切です。

 

サンクコストとは何か

サンクコストとは、すでに支払ってしまい、現在や将来の意思決定によって回収できない費用のことです。

例えば、次のようなものがあります。

・すでに支払った開発費
・利用し終えた広告費
・すでに使った時間
・過去に投入した人件費
・返金されないチケット代

これらは、今後どの選択をしても戻ってこない費用です。

合理的な意思決定では、こうした過去の費用ではなく、これから発生する追加費用と、これから得られる利益や価値を比較する必要があります。

 

コンコルド効果の身近な例

コンコルド効果は、企業経営だけでなく日常生活でも見られることがあります。

 

▽映画が面白くなくても最後まで見る

映画館で映画を見始めたものの、途中で「面白くない」と感じることがあります。

そのとき、「せっかくチケット代を払ったのだから最後まで見なければもったいない」と考えて、最後まで見る場合があります。

しかし、チケット代は途中で帰っても最後まで見ても戻ってきません。

そのため、本来は「これからの時間を映画に使う価値があるか」で判断する方が合理的です。

 

▽成果が出ない勉強を続ける

長期間取り組んできた資格試験や学習について、「ここまで勉強したのだからやめられない」と感じることがあります。

もちろん、継続することで成果が出る可能性もあります。

問題なのは、「今後も続ける価値があるか」を検討せず、過去に使った時間だけを理由として続けることです。

 

▽使わないサービスを解約できない

高額な入会金を支払ったサービスなどを、ほとんど利用していないにもかかわらず、「せっかく入会金を払ったのだから」と考えて継続する場合があります。

この場合も、過去に支払った入会金ではなく、今後支払う費用と今後得られる価値を比較することが重要です。

 

経営におけるコンコルド効果

経営では、大きな投資を伴う意思決定が多いため、コンコルド効果が問題になる場合があります。

例えば、新規事業を始めるために1億円を投資したものの、市場環境が変化し、追加で1億円を投資しても十分な利益が見込めないとします。

このとき、「すでに1億円使ったのだから、ここでやめるわけにはいかない」と考えると、過去の投資が現在の判断に影響していることになります。

本来検討すべきなのは、「ここから追加で1億円を投資することで、それ以上の価値を生み出せるのか」です。

過去に投じた1億円は、事業を続けても中止しても戻ってきません。

そのため、今後の投資によって得られる期待利益やリスクを基準に判断することが重要です。

 

経営では、「ここまでやったのだから」「これだけお金をかけたのだから」といった感情が、意思決定に影響することがあります。

数字だけを見れば撤退すべき状況でも、担当者の思い入れや責任感、失敗を認めたくない気持ちなどが判断を難しくする場合があります。

日本経営心理士協会では、こうした感情や認知の偏りが、経営判断や行動にどのような影響を与えるのかを理解し、実務に活かす「経営心理学」を体系化し、「経営心理士講座」でお伝えしています。

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コンコルド効果が生じる理由

なぜ、人はすでに失った費用に影響されてしまうのでしょうか。

そこには、いくつかの心理が関係する場合があります。

 

▽損失を確定したくない

事業を中止すると、それまでに使ったお金や時間が「無駄だった」と認めるように感じることがあります。

そのため、「もう少し続ければ取り戻せるかもしれない」と考えてしまう場合があります。

しかし、継続することで追加の損失が発生する可能性もあります。

 

▽自分の判断が間違っていたと認めたくない

自分が決めた事業やプロジェクトの場合、中止することが「自分の判断が間違っていた」と認めるように感じられることがあります。

そのため、状況が悪化していても、当初の判断を正当化するために継続してしまう場合があります。

 

▽成功する可能性だけに注目する

多額の投資をした後では、「ここまで来たのだから、あと少しで成功するかもしれない」と考えやすくなる場合があります。

その結果、成功する可能性を過大に見積もり、失敗する可能性や追加コストを十分に検討しなくなることがあります。

 

▽責任感が撤退を難しくする

経営者やプロジェクト責任者は、「自分が始めた以上、最後までやり切るべきだ」と考える場合があります。

責任感そのものは重要ですが、「責任を持つこと」と「どのような状況でも続けること」は同じではありません。

状況の変化に応じて撤退することも、経営上の責任ある判断になり得ます。

 

「続けること」が必ずしも間違いではない

コンコルド効果について学ぶと、「赤字の事業はすぐにやめるべき」と考えてしまうことがあります。

しかし、事業を継続すること自体が間違いなのではありません。

短期的には赤字でも、将来的に大きな利益を生む可能性がある事業もあります。

また、新規事業では、黒字化までに一定の期間が必要になることもあります。

重要なのは、「これまでいくら投資したか」ではなく、「これから投入する資源に対して、どの程度の将来価値が期待できるか」を基準に判断することです。

将来の収益性や戦略的価値を考えた結果、継続するという判断も合理的です。

 

コンコルド効果を防ぐ方法

コンコルド効果による判断の偏りを減らすためには、意思決定の仕組みを工夫することが重要です。

 

▽撤退基準を事前に決めておく

プロジェクトを始める前に、「売上が○円に届かなければ撤退する」「○年以内に黒字化しなければ見直す」といった基準を設定しておく方法があります。

投資した後では感情が入りやすくなるため、投資前の比較的冷静な段階で基準を決めておくことが有効です。

 

▽過去の投資をいったんゼロとして考える

判断に迷った場合には、「もし今日初めてこの事業を知り、まだ1円も投資していなかったとしたら、今からこの事業に投資するだろうか」と考える方法があります。

このようなゼロベースの視点を持つことで、過去の投資から距離を置きやすくなります。

 

▽第三者の意見を取り入れる

自分が長く関わったプロジェクトほど、客観的に評価することが難しくなる場合があります。

そこで、プロジェクトへの思い入れが比較的少ない第三者に意見を求める方法があります。

ただし、第三者であれば必ず正しい判断ができるわけではありません。

複数の視点を取り入れ、前提や数字を確認しながら検討することが重要です。

 

▽複数のシナリオを考える

「成功するか、失敗するか」だけで考えるのではなく、複数のシナリオを用意する方法があります。

例えば、楽観的なケース、標準的なケース、悲観的なケースについて、追加投資額や期待収益を試算します。

複数のシナリオを見ることで、「成功するはずだ」という一つの見方だけに偏りにくくなります。

 

▽定期的に継続の妥当性を見直す

事業環境は変化します。

開始時点では合理的だった事業でも、競合の登場、技術革新、顧客ニーズの変化などによって、継続の価値が変わる場合があります。

そのため、「一度決めたから続ける」のではなく、一定期間ごとに継続の妥当性を見直すことが重要です。

 

人間関係にもコンコルド効果は起こるのか

コンコルド効果は、金銭的な投資だけでなく、時間や努力を費やした場面にも当てはめて説明されることがあります。

例えば、長い時間を費やした人間関係について、「ここまで付き合ってきたのだから別れるのはもったいない」と感じる場合があります。

ただし、人間関係は金銭的な投資判断よりも複雑です。

感情、責任、家族関係、生活環境など、多くの要因が関係するため、単純にサンクコストだけで判断することはできません。

重要なのは、「過去にどれだけ時間を使ったか」だけで今後の選択を決めないことです。

 

過去ではなく「これから」で判断する

コンコルド効果から学べる重要なことは、「過去に何を失ったか」と「これからどうするか」を分けて考えることです。

事業やプロジェクトに大きな資金や時間を投入すると、それを中止することは心理的に難しくなります。

しかし、過去に使った資金や時間は、今後どの選択をしても戻ってこない場合があります。

そのため、意思決定では、「ここまで何をしてきたか」だけではなく、「今この時点から、どの選択をすれば最も望ましい結果につながるか」という視点が重要です。

一方で、経営判断は数字だけで行われるものでもありません。

失敗を認めたくない気持ち、これまで努力してきた人への責任、撤退による周囲の評価への不安など、さまざまな心理が意思決定に影響します。

日本経営心理士協会の「経営心理士講座」では、人がなぜ合理的ではない判断をすることがあるのか、感情や認知が意思決定にどのように影響するのかを理解し、経営やマネジメントに活かす方法を学びます。

重要な経営判断を「ここまでやったから」という過去への思いだけで決めるのではなく、人の心理的な偏りも理解したうえで判断の質を高めたい方は、経営心理学の考え方も参考にしてみてください。

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この記事の執筆者

藤田 耕司(ふじた こうじ)

一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

早稲田大学卒業後、監査法人トーマツに入所。独立後、日本経営心理士協会を設立。
高い成果を残す経営者・ビジネスマンの共通点を心理学的に分析し、人間心理に基づく経営・ビジネスの手法を経営心理学として体系化。経営心理学を用いて1200件超の経営改善を行う。
その成果の高さが認められ、金融庁や日本銀行でも教鞭をとり、日経新聞やダイヤモンド、東洋経済にも掲載される。

       
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