2021.5.10部下を叱れない3つの理由とは?正しい叱り方は部下から人望を得る
この記事の執筆者
藤田 耕司(ふじた こうじ)
(社)日本経営心理士協会 代表理事/経営心理士、公認会計士、税理士
19歳から心理学を学び、1,200件超の経営指導の経験を基に成果を出す人の行動を心理学的に分析し、経営心理学として体系化。その内容を指導し、経営改善の成果を高める。
その手法を伝える経営心理士講座を開講。国内、海外からのべ4,000名超が受講。民間企業や金融庁でもその内容が導入される。日経新聞、日経ビジネス等、メディア取材も多数。
日本経営心理士協会代表の藤田です。
私は経営心理士として優れた経営者やビジネスパーソンの行動を心理学的に分析した結果を経営心理学として体系化し、経営のコンサルティングを行い、その内容を学ぶ経営心理士講座を主宰しています。
部下を叱れない。
今、そういうご相談を受ける機会が増えています。
言うまでもなく、上司は叱るべき時には叱らなければなりません。
これは上司の重要な仕事です。
ルールを守らない、ミスを犯すといった組織にとってマイナスのことをした場合には、それを指摘し、同じことを繰り返させないようにする必要があります。
これまで経営心理士として様々な組織の経営を見てきましたが、上司がその指摘をせずに黙認していると、組織の緊張感が薄れ、雰囲気は乱れ、統率をとることが難しくなります。
部下を叱れないまま組織を拡大すると…
あるIT企業の社長から部下を叱ることができなくて困っているという相談を受けた時のこと。
その会社の状況は次のようになっていました。
- 9時出社なのに10分、20分の遅刻は当たり前。
- 部下が上司に対して敬語で話したり、ため口で話したりし、緊張感がない。
- 仕事を締め切りまでに終わせていないケースが増え、締切りにまでに終わらなかった場合、依頼された仕事量が多過ぎたと上司にクレームを言うこともある。
- 会社に怠惰な雰囲気が流れ、その雰囲気に合わない向上心の高い部下が離職していく。
結果、現場の統率がとれなくなっており、社長は精神的にまいっていました。
叱るべき時に叱らないで放置し続けると組織が乱れる、その典型的な例でした。
こういった状況になると、当然、組織の生産性は下がります。
また、離職率も高くなり、社長や管理職のストレスも大きくなります。
叱るべき時に叱らないまま組織を大きくすると、こういった状況になるおそれがあります。
そのため、叱るというコミュニケーションは組織の将来性を左右する重要なコミュニケーションであり、部下を叱れるようになった結果、組織が活性化し、業績も上がったというケースが多くあります。
その実際の事例はこちらをご参照ください。
部下を叱れない3つの理由とは?
ではなぜ部下を叱ることができないのでしょうか。
その理由は主に3つあります。
①部下から嫌われる、関係が険悪になるのが怖いから
②叱ると部下のモチベーションが下がるから、部下が辞めるから
③正しい叱り方が分からないから
ただ、①②の理由の背景には、ある傾向が見られます。
それが「叱る」ということと「怒る」ということを混同しているということです。
叱るべき時に怒ると、①②のように、部下から嫌われ、部下のモチベーションが下がり、部下が辞めたりする可能性もあります。
一方、叱るべき時に適切な叱り方ができると、以前より部下との信頼関係は深まり、部下のモチベーションは上がり、ずっとこの会社で働きたいと思えるようになったりします。
大袈裟なように聞こえるかもしれませんが、これは決して大袈裟な話ではなく、実際にクライアントや経営心理士講座の受講生からご報告を受けている事実です。
「怒る」と「叱る」の違いとは?
では、「怒る」と「叱る」はどう違うのでしょうか。
怒るというのは、自分の中に生じた怒りを相手にぶつけるということです。
怒りという感情は大きなエネルギーを持ちます。
そのため、怒りを覚えるとそのエネルギーははけ口を求めます。
そのはけ口として、相手に怒りをぶつけます。
一方、叱るというのは相手のためを思って相手の行動や発言、態度を正すことをいいます。
そのため、叱る前提として、相手に対する思いやりの気持ち、相手の存在を肯定する気持ちがあることが必要です。
その気持ちがあるから、相手のために叱らなければならないという動機から叱ります。
「怒る」は自分の怒りのはけ口として怒りをぶつけるために行うことです。
「叱る」は相手に対する思いやりの気持ちから相手のために行うことです。
一言で言えば、「怒る」は自分のため、「叱る」は相手のためのコミュニケーションです。
叱り方を指導し、コンサルタントとして成果をあげた事例はこちら
怒っているのか、叱っているのかを部下は感じ取る
部下の側も、この上司は怒っているのか、叱ってくれているのかは感覚的に感じ取るものです。
部下は「怒られている」と感じると、その上司に嫌悪感を覚えたり、自分の存在を否定されたような気持ちになったりします。
その結果、モチベーションが下がる、更には会社を辞めるということまで考えます。
一方、「叱ってくれている」と感じると、その上司に信頼を覚え、それが人望に繋がります。
ただ、「叱ってくれている」と部下が感じるコミュニケーションは決して簡単なものではありません。
こちらは叱っているつもりでも、部下は「怒られている」と感じる可能性はあります。
部下の正しい叱り方
では、どういう叱り方をすれば部下は怒られていると感じず、叱ってくれていると感じるのでしょうか。
それは部下のプライドを守りながら叱るという叱り方です。
人は誰しもプライドを持っています。
そのプライドを傷つけられると、プライドを傷つけた相手と距離をとろうとします。
そうなると、その後の人間関係はぎくしゃくし始めます。
叱るということは、相手の発言や行動、態度を否定することにもなり得ます。
自分の発言や行動、態度を不用意に否定されると、自分自身が否定されているように感じ、プライドが傷つきます。
そこで大事なのが、あなたの発言や行動、態度は否定し、改めるよう促すけれども、あなた自身を否定しているわけではないということを伝えることです。
その伝え方はいくつかありますが、そのうちの一つが、相手の優れた点や相手の可能性、期待の大きさを先に伝えてから叱るという方法です。
あなたは優れた存在であり、更なる伸びしろがある、だからこそ叱るというスタンスをとります。
相手を否定するスタンスで叱るのか、相手を肯定するスタンスで叱るのか。
前者のスタンスでは叱ったつもりでも相手はプライドを傷つけられ、「怒られた」と感じるでしょう。
後者のスタンスで叱ると、相手はプライドを保つことができ、「叱ってくれた」と感じるでしょう。
そして、大事なのは叱り終える結びの言葉です。
結びの言葉がネガティブな言葉であれば、「怒られた」と感じる可能性が高くなります。
しかし、結びの言葉がポジティブな言葉であれば、「叱ってくれた」と感じる可能性が高くなります。
ご自身が誰かに叱られる時のことをイメージしてみてください。
叱るスタンスや結びの言葉がどうかによって、叱られた後の感じ方がずいぶん違うのはお分かりいただけるでしょう。
また、いずれのスタンスで叱るかで叱る側の心理状態も大きく変わります。
それによって言葉の用い方や感情の状態にも自ずと影響します。
ただ、肯定するスタンスで叱るべきとは頭では分かっていても、怒りが収まらないとなかなか実践することは難しいものです。
その場合は、複数回深呼吸をした後に、どう叱るかを一旦シミュレーションします。
そして、そのシミュレーションに沿って、怒りの感情の手綱を引きながら、叱るコミュニケーションをとってください。
この叱るコミュニケーションの詳細については、経営心理士講座の組織心理士コースクラスAで、現場の実例を交えて体系的にお伝えしていきます。
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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。