マズローの欲求段階説
マズローの欲求段階説とは、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローが提唱した、人間の欲求が生じるメカニズムを階層化した理論です。
低次の欲求にあたる生理的要求や安全欲求が満たされることにより、より高次の要求が生じるようになるとされています。
マズローの欲求段階説はマーケティングなど現代の経営学にも幅広く活用されるなど、非常に汎用性の高い考え方です。
マズローの欲求段階説を活用していくためには、それぞれの欲求の特徴を理解していく必要があります。
ここでは低次の欲求から順に解説していきます。
第一階層:生理的欲求
生理的欲求とは、第一階層の欲求で、人間あるいは生物として生命を維持するために必要なレベルの欲求です。
具体的には、食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求や排せつ、水分補給、呼吸に関わる欲求などをいいます。
人間が生きていくうえでは、この生理的欲求に満たされていることが大前提であり、生きていくための基本的な欲求です。
このため、生理的欲求は欲求の段階の土台となります。
ビジネスに関して言えば、長時間労働などによる睡眠不足が生理的欲求が満たされていない状態を生み出します。
第二階層:安全欲求
安全欲求とは、危険を回避して、安全に暮らしたいなど、安心や安全に関する第二階層の欲求です。
例えば自分が住んでいる国が戦争をしていて、いつ命を落とすか分からないとなった時、不安に陥り、生活の快適さや安心、安全性が損なわれます。
このように危機的状況を回避し、安心、安全の確保を欲するのが安全欲求です。
ビジネスに関して言えば、経済的な安定や雇用の維持、危険な現場での安全管理などが安全欲求に関係してきます。
第三階層:社会的欲求(親和欲求)
社会的欲求とは、家族や友人、会社の組織など、組織やグループに所属したいという人間関係に関する欲求です。
生理的欲求や安全欲求が満たされていても、自分を受け入れてくれる場所や必要としてくれる組織がないと、孤独感、疎外感を感じ、それが心の健康を損なわせます。
このように人は何らかの組織に属していないと社会的欲求が満たされなくなります。
ビジネスに関して言えば、職場の輪の中に溶け込めているか、職場に自分の居場所があるかどうかが社会的欲求に関わる要素となります。
第四階層:承認欲求
承認欲求とは、誰かから認められたいという欲求です。
認められたいとは、褒めてもらいたい、特別な存在だと思ってもらいたい、共感してもらいたい、高く評価してもらいたいなどを含みます。
この認められたいという欲求を満たすためのツールとして普及しているのが、FacebookやInstagramなどのSNSです。
SNSで「いいね!」をもらうことは承認欲求を満たすことになります。
SNSが爆発的に普及していることからも、人間の承認欲求の強さがうかがい知れます。
ビジネスに関して言えば、承認欲求が満たされることで、およそ7割の人が仕事に対するモチベーションが上がるというデータもあり、多くの社員が「上司に認められたい」と感じていることが分かります。
上司は部下が承認欲求を満たされるとモチベーションが上がるということを認識し、コミュニケーションをとることで、より従業員満足度が高く、生産性の高い職場環境の実現に繋げることができます。
第五階層:自己実現欲求
自己実現欲求とは、自分の可能性を追求して理想の自分に近づきたい、自分の能力や才能を最大限に発揮したいという欲求です。
例えば、「独立して事業を興したい」「田舎暮らしをしたい」など、自分らしく生きることが自己実現や幸せに繋がっていくのです。
ビジネスに関して言えば、部下の適性や好みに合った仕事を任せ、その分野で才能を開花させることで、自己実現欲求を満たすことができます。
これによって部下のモチベーションを上げ、組織の生産性を上げることにも繋がります。
第六階層:自己超越欲求
自己超越欲求とは、他者に喜んでもらいたい、社会をより良いものにしたいなど、自分のエゴを超えて他者や社会のことを想う欲求です。
例えば、寄付活動によって困っている人を助けたい、ボランティア活動を通してより良い社会にしたいといった欲求は自己超越欲求であるといえます。
マズローの欲求段階説は一般的には第五階層までと言われていますが、マズローは晩年にこの第六階層の存在を明らかにしました。
経営・ビジネスの現場を変えてきた実践的心理学はこちら
https://keiei-shinri.or.jp/?Glossary
欲求段階説における欲求が生じる順序
マズローの欲求段階説は、第一階層の生理的欲求から生じ、生理的欲求が満たされると安全欲求が生じるといったように、低次の欲求が満たされるとより高次の欲求が生じるとされています。
ただ、実際は必ずしもこの5つの階層通りに欲求が生じるわけではありません。
例えば、人によって社会的欲求よりも承認欲求を優先する人もいるなど、求める欲求や重要視する欲求の順序が異なる場合があるということです。
営業・マーケティングにおける欲求段階説の活用
人は上記の欲求のいずれかを満たすために、商品やサービスを購入しようとします。
さらにはこれらの欲求が満たされることが、より明確にイメージできると、その商品・サービスに高い価値を感じるようになります。
例えば、エステで綺麗になるとイメージするのと、エステで綺麗になることで周囲から綺麗だと思われるようになると承認欲求が満たされるところまでイメージするのとでは、エステに対して感じる価値は大きく異なります。
このように、自社の商品・サービスを購入することによって、どの欲求がどのように満たされるかまで顧客に伝えることは、営業やマーケティングの成果を上げるうえで非常に効果的な方法です。
モチベーションアップや離職率低下のための欲求段階説の活用
職場で上記の欲求が満たされることで、仕事に対するモチベーションが上がり、意欲的に仕事を取り組むようになることで人材育成にも大きな成果が見込めます。
また、こういった状況を実現することが離職率の低下に繋がります。
職場で上記の欲求を満たす例としては、次のようなものが挙げられます。
生理的欲求・安全欲求
現代において生きていくためにはお金が必要です。そのため、安定的に十分な給料が得られることが生理的欲求、安全欲求を満たすことになります。
社会的欲求
職場に自分の居場所がある、自分を受け入れてくれる仲間がいるといった状況が確保できることで、社会的欲求は強く満たされます。
そのため、そういった良好な人間関係が保たれる職場作りはマネジメントをするうえで極めて重要な意味を持ちます。
承認欲求
上司から褒められる、努力が認められる、高く評価されることなどにより承認欲求は満たされます。
そのため、優れた点や努力の跡が見られる点について、上記のようなコミュニケーションをとることで承認欲求を満たすことができます。
自己実現欲求
自分の能力に合った仕事、自分のやりたい仕事を担当させてもらい、その仕事で大きな成果をあげることは自己実現欲求を強く満たすことになります。
そのため、部下の意向に配慮した仕事を任せ、その仕事の支援をすることで、自己実現欲求を満たすことができます。
自己超越欲求
自己超越欲求は人に喜んでもらうこと、社会に貢献していると実感できることで満たされます。
そのため、感謝を伝えることや仕事の社会的意義を伝えることを通じて、自己超越欲求を満たすことができます。
これらのように欲求を満たすことを意識したコミュニケーションや関わりを行うことは、モチベーションアップや人材育成、離職率低下を持たらす上で、大きな効果をもたらします。
こういった心理学の知識を活用して経営・ビジネスの現場を変える経営心理士講座を開催しています。
今、この講座を受講された方が現場で多くの成果を出されています。
詳細はこちらをご覧ください。
https://keiei-shinri.or.jp/?Glossary
では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。