2022.2.23モチベーションマネジメントの解説と進め方
この記事の執筆者
藤田 耕司(ふじた こうじ)
(社)日本経営心理士協会 代表理事/経営心理士、公認会計士、税理士
19歳から心理学を学び、1,200件超の経営指導の経験を基に成果を出す人の行動を心理学的に分析し、経営心理学として体系化。その内容を指導し、経営改善の成果を高める。
その手法を伝える経営心理士講座を開講。国内、海外からのべ4,000名超が受講。民間企業や金融庁でもその内容が導入される。日経新聞、日経ビジネス等、メディア取材も多数。
部下のモチベーションを上げたい。
クライアントのモチベーションを上げたい。
子供のモチベーションを上げたい。
そういった、「人のモチベーションを上げたい」という願いは多くの方が抱く願いでしょう。
では、モチベーションの構造はどのようになっているのでしょうか。
そして、そのモチベーションの構造に沿ったモチベーションマネジメントとはどのようなマネジメントなのでしょうか。
当記事ではこの点についてお伝えしていきたいと思います。
1.モチベーションマネジメントとは?
モチベーションマネジメントとは、メンバーが高いモチベーションで仕事に取り組めるように動機づけをし、そのために必要な関わり、リーダーシップの発揮、仕組み作りを行うマネジメントをいいます。
そして、モチベーションが高まるきっかけとなるものを「動機づけ」といいます。
動機づけには「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」とがあります。
①外発的動機づけとは
外発的動機づけとは、外的報酬や罰など、外部からの刺激によって動機づけられている状態のことをいいます。
外的報酬とは、褒められる 評価が上がる 表彰される 給料が上がるといったことが挙げられます。
罰とは、叱られる、評価が下がる、給料が下がるなどが挙げられます。
②内発的動機づけとは
一方、内発的動機づけとは、仕事が楽しい、仕事にやりがいを感じるなど、内面から湧き起こるポジティブな感情によって動機づけられている状態のことをいいます。
内発的動機づけによって仕事ができると、 外発的動機づけの有無にかかわらず、高いモチベーションを維持し、自ら進んで仕事に取り組むことができます。
そのため、内発的動機づけによって仕事ができている状態が望ましいといえます。
2.モチベーションとエンハンシング効果
ただ、職場には内発的動機づけによって仕事ができていないメンバーもいます。
そういったメンバーのモチベーションを高めるには外発的動機づけが必要です。
また、外発的動機づけによって仕事をしているうちに仕事そのものが楽しくなり、 内発的動機づけから仕事をするようになることがあります。
この効果を「エンハンシング効果」といいます。
エンハンシング効果をもたらすことができれば、外発的動機づけがなくてもそのメンバーは高いモチベーションを維持しながら働き続けることができます。
モチベーションマネジメントの重要なポイントの一つが、このエンハンシング効果をもたらすということです。
これができる上司は、組織を大きく成長させることができるため、高い評価を受ける傾向にあります。
エンハンシング効果をもたらし、部下のモチベーションを上げ、優れた成果を残された方の事例はこちらを参照ください。
https://keiei-shinri.or.jp/voice/
このエンハンシング効果をもたらす上では、まず外発的動機づけの効果を高めることが必要です。
では、外発的動機づけの効果はどのように高めればよいのでしょうか。
3.モチベーションマネジメントの効果を高める外発的動機づけ
効果的な外発的動機づけを行う上でまず必要となるのが、人間の欲求の理解です。
モチベーションに関する理論としては、エイブラハム・マズローが提唱した「欲求段階説」が有名です。
この「欲求段階説」を経営の現場でより活用しやすく進化させたのが、クレイトン・アルダファーが提唱した「ERG理論」です。
ERG理論では、人間は「生存欲求」「関係欲求」「成長欲求」の三つの欲求を根源的に持つとしています。
生存欲求とは、安全安心に生きていきたいという欲求であり、現代ではお金が影響します。
関係欲求とは、重要な人と良い人間関係を築き、人から認められたいという欲求です。
成長欲求とは、苦手を克服し、長所を伸ばし、 自らの可能性を追求していきたいという欲求です。
また、欲求は「私欲」と「公欲」に分類できます。
私欲は、自分がいい思いをしたい、自分のために何かをしたいという欲求です。
公欲は、人を喜ばせたい、他者のために何かをしたい、チームや組織、社会の役に立ちたいという欲求です。
ERG理論の3つの欲求は私欲に属します。
つまり、 生存欲求、関係欲求、成長欲求、公欲の四つの欲求を満たすことが、モチベーションマネジメントの効果を高める外発的動機づけを行う上で重要になります。
4.外発的動機づけにおける具体的な関わり
では、 生存欲求、関係欲求、成長欲求、公欲の四つの欲求をどのように満たしていけばよいのか、その関わりについてお伝えしたいと思います。
① 生存欲求を満たす関わり
生存欲求を満たす上では、現代ではお金が重要になります。
そのため、十分な給料を払うということが基本的な生存欲求を満たす関わりとなります。
加えて、健康・安全に働ける職場づくりもこのための関わりとして重要になるでしょう。
② 関係欲求を満たす関わり
関係要求は「認めて欲しい」という欲求です。
「認めて欲しい」とは具体的には、話を聴いて欲しい、話に共感して欲しい、褒めて欲しい、高く評価して欲しい、労をねぎらって欲しい、気にかけて欲しいといったことが挙げられます。
そのため、関係欲求を満たす関わりとしてまず挙げられるのが、「認めて欲しい」という欲求を満たすコミュニケーションです。
つまり、話を聴く、話に共感する、褒める、高く評価する、労をねぎらう、気にかけるといったコミュニケーションです。
また、メンバー同士が良好な人間関係を築くきっかけとなる懇親会やイベント等を企画することも、関係欲求を満たす関わりとして重要であるといえるでしょう。
こういった関わりを通じて、メンバーのことを認め、メンバー同士が職場で良好な人間関係を築けると、関係欲求が満たされ、モチベーションが上がります。
③成長欲求を満たす関わり
成長欲求を満たす関わりとしては、相手の成長を支援することが挙げられます。
そのためには、丁寧に指導する、さらなる成長につながる仕事を任せる、成長が実感できるフィードバックを行うといった関わりが重要です。
加えて重要なのが、相手の更なる可能性に気付かせるということです。
「君の接客はお客様からの印象が良いので営業に向いてる」
「君は仕事の教え方が上手だから、優秀なマネージャーになれる」
「君は文章を書くのが非常に上手いので、マーケティングが得意かもしれない」
こういった相手の適性をフィードバックし、 その適性をさらに伸ばせる未来を示唆するコミュニケーションを通じて、相手の更なる可能性に気付かせます。
こういった関わりを通じて、成長が実感でき、ここで働くことで自分はさらに成長できる、自分の可能性を広げることができると感じてもらうことで成長欲求が満たされ、モチベーションは高まります。
④ 公欲を満たす関わり
公欲は人や社会の役に立っているという実感が得られることで満たされます。
仕事においては、お客様や上司、部下といった人たちに喜んでもらえる、感謝されるといったことを通じて公欲は満たされます。
そのための関わりとしては、お客様からの感謝の声を伝える、自分が何かをしてもらった際には感謝を伝えるといった関わりが挙げられます。
また、自分がやっている仕事は社会的意義が高い、社会に貢献しているという実感が得られることも公欲を満たす上では重要な要素です。
そのための取り組みとしては、お客様からの感謝の声をメンバーと共有する、社会貢献の要素が含まれる理念やビジョンを示すといった取り組みが挙げられます。
5.モチベーションマネジメントの定着に向けて
上記のように、十分な給料を払ってくれて、良好な人間関係のもと、周りの人が自分のことを認めてくれて、成長が実感できるとともに更なる可能性を見出すことができ、社会の役に立てている実感が得られる。
そんな職場であれば、モチベーション高く仕事ができるのではないでしょうか。
なぜなら、それは人間が根源的に抱える欲求を満たす関わりが行われているからです。
こういった関わりを取り入れたマネジメントをしていくことが、モチベーションマネジメントの基礎となります。
そして、その関わりをベースとしたリーダーシップを発揮することができると、メンバーのモチベーションや組織の生産性、業績などに強い影響を及ぼすことができるようになります。
また、そういった関わりやリーダーシップが属人化しないように、その関わりやリーダーシップを促し、定着させるための仕組み作りが重要になります。
モチベーションマネジメントに必要なリーダーシップや仕組み作りについて、経営心理士講座の中で具体事例を交えてより詳細にお伝えしています。
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その成果の高さから、民間企業をはじめ、金融庁や日本銀行でも導入されています。
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では、今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。