3C分析
3C分析とは、ビジネスにおける戦略立案フェーズで用いられるマーケティングフレームワークのことです。1982年にマッキンゼー・アンド・カンパニーの大前研一氏が自著『The Mind of the Strategist』内で提唱しました。
3C分析では、市場(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3つの視点からビジネスの外的要因・内的要因を洗い出し、自社が優位に戦えるポジションを策定することで、これら三単語の頭文字を取って『3C分析』と呼ばれています。
▽市場(Customer)
現代は市場が飽和しており、「高品質な商品を作っただけで売れる」というのは過去の話となりました。そのため、近年のマーケティングは商品の品質よりも顧客視点が重要視されています。「作ったものを売る」から「売れるものを作る」への転換です。
具体的には、3C分析の市場調査は以下の情報集めからスタートします。最初に市場状況を明確に整理しておくことで、施策の方向性がブレなくなります。
<市場>
・市場規模
・市場の成長率
・将来の成長見込み
<顧客>
・ターゲットユーザーのニーズ
・購買行動・プロセス
・既存製品への不満
▽競合(Competitor)
市場調査後、次は競合(Competitor)を調査していきます。
自社の立ち位置は競合と相対的に決まるため、まずは競合がどのような戦略を用いているのかを明確にします。
・競合は誰をターゲットに商品を売っているか?
・競合の強みは?
・競合の弱みは?
など、競合の分析をしつつ、市場の空いている席を探すようなイメージで検討していきます。
▽自社(Company)
ここまで集めたデータをもとに自社が狙うポジションを決めていきます。
自社分析のポイントは、自社に都合の良い解釈をしないことです。市場・競合調査で集めた客観的なデータに基づき、現実的な戦略を練ることが重要になります。
また、自社の商品やサービスは改良できますが、競合の商品に手を加えたり、日本の景気をコントロールしたりすることはできません。まずはコントロールできない前提条件をクリアにした上で自社分析は3C分析の最後に行い、どのように展開していくかを考えることが望ましいといえます。
マーケティングフローにおける3C分析の役割
マーケティングにおける3C分析の目的は「競争優位性を確立する」ことです。
競争優位性とは「差別化」のことを指します。競合とは違う形で顧客のニーズを掴めるポジションを策定するのが、3C分析の最終目標です。
3C分析は、あくまで事業の方向性を定めるのが役割であるため、より具体的なサービスの特徴や予算などは、3C分析より後の工程で詰めていきます。
3C分析の具体的な進め方
それでは、3C分析の具体的な進め方について見ていきます。
▽①市場・顧客分析
まずは3Cの「Customer」=市場・顧客分析から開始します。
ここでのCustomerは、日本全体の政治・経済から顧客個人の志向性まで、幅広い意味を含んでいます。
市場を「日本全体」=マクロの視点と、「市場」=ミクロの視点に分けて分析をするのがポイントです。
マクロな視点で分析をする上では、『PEST分析』というフレームワークを使うのが効果的です。
・Politics(政治):規制緩和、対外関係、税制や法制の変化など
・Economy(経済):景気、消費の傾向など
・Society(社会):多様性、各世代の行動傾向など
・Technology(技術):イノベーション、IT化など
まずは戦うフィールドの前提条件を確認することで、コントロール不可能な要素に大きなリソースを投下してしまうリスクを避けることができます。
続いて、市場調査を行います。
市場調査の際は、市場規模とその内訳、成長率や今後の成長見込み、メインターゲット層等の項目を意識し、複数の項目から調査を行います。
最後に、顧客について深堀していきます。
市場と切り離して考えず、マクロ・ミクロの市場状況が顧客に与える影響を考慮して、顧客のニーズを分析します。
ニーズ調査はインターネットだけでなく、アンケートや街頭インタビューも駆使して、ユーザーの生の声を集めるのがおすすめです。
顧客はどんなことに悩んでいるのか、どんな手段でそれを解決しているのか、あるいは、解決手段への不満や代替品の有無など、顧客の声を集めることで、ニーズを知り、市場可能性について分析することができます。
▽②競合分析
次に競合分析を行います。
素晴らしいアイデアを思いついても、すでに競合が取り入れているのであれば、その分析を慎重に行い市場を見極める必要があります。
競合を分析する際には、例えば以下のような項目を軸に分析してください。
・業界におけるポジションと影響力
・顧客数、資本力
・商品の特徴
・商品の強み、弱み
・近年シェア率を伸ばしている企業と想定されるアクション
例えば、近年急激にシェアを伸ばしている企業があった場合、その要因が市場にあるのであれば、その市場の波に乗ることで売上を伸ばせる可能性もあります。
▽③自社分析
最後に自社分析です。
まずは自社内の状況について、従業員数・資本力・開発力等の観点から定量的に整理してみましょう。
そして、これらの社内リソースを明確にしたら、『SWOT分析』を使って自社の強みや弱みについて外的・内的視点から分析を行い、立ち位置を決めていきます。
このように複数の項目からデータを洗い出した上で、それらを多角的に見ることで、多くの仮説や可能性を見出すことができます。
3C分析のポイント
3C分析のポイントを5つ紹介します。
▽客観的な事実のみを集める
事実を『解釈』するのはSWOT分析からで、3C分析ではあくまで客観的なデータを集めるようにしてください。
事実と解釈を混ぜてしまうと仮説の精度が大幅に下がるリスクがあります。
まずは徹底的に事実を集め、その後でデータの咀嚼を行っていきます。
▽できるだけ多くの事実を集める
事実の母数が少ない状態で分析をすると実情とは異なる結論が出てしまうかもしれません。
例えば、ある意見に対して賛成派が100%だったとしても、賛成派が2人しかいなかったらデータの信憑性は低くなってしまいます。
一般的には、データの母数は最低400程度あると良いと言われています。
データ集めは地道な作業ですが、その分重要度も高くなるため、時間をかけて取り組み、その精度を高めていくことが重要です。
▽フィールドワークで顧客の生の声を集める
顧客調査はインターネットだけでなく、顧客に直接インタビューやアンケートを行うなど、生の声を集めていきましょう。
顧客のリアルな声は、インターネットでのリサーチ以上に有益なこともあるため、それぞれ使い分けながら活用していくことが、重要なポイントとなります。
インターネット上では、SNSやメールを用いてアンケートを依頼する、リアルな場では、潜在顧客・ターゲット層顧客へのヒアリングを行う、カスタマーセンターに届いたユーザーの声を集めることも非常に有効です。
▽マクロ視点を念頭に置いて分析する
顧客の行動は市場の影響を受けていることが多々あります。
このためミクロ視点での顧客分析を行う際には、マクロ視点で市場調査や分析をすることも重要です。
例えば、貯蓄を投資に増えている人が多いというミクロ分析結果が出た際、投資の1つである仮想通貨への投資判断が妥当と判断してしまうことは、マクロ視点が欠けているといえます。
市場や国内情勢などの情報を広く集め分析する視点を持つことで、仮想通貨への投資判断の妥当性をはかり判断することができるのです。
▽BtoBの場合は相手企業も3Cで分析する
サービスの取引相手が法人の場合は、相手の企業も3C分析してみることで、相手をより深く知り、自社の適切な立ち位置を見極めることができます。
3C分析はあらゆるビジネスに欠かせないフレームワーク
3C分析は業界を問わず、どのようなビジネスでも利用できる汎用性の高いフレームワークです。
自社外の状況を規定してから自社のポジションを考えるため、戦略に大きなズレが生まれづらくなる、ビジネスの成功のために欠かせない重要な分析の1つです。
競合との差別化に悩んでいる企業は、ぜひ3C分析を用いてサービスのポジショニングを検討してみてください。
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では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。