イノベーションのジレンマ - 一般社団法人日本経営心理士協会
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イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマとは企業経営理論の一つで、特定の業界で大きなシェアを獲得した企業が、時代の変化に対応できずに売上を低迷させてしまうことを指します。

成功している企業は顧客ニーズに耳を傾けて、さらに高品質の製品サービスの提供に注力しますが、それが元で新しいイノベーションへの対応に遅れ、失敗を招いてしまうケースが数多く発生しました。

1997年にアメリカの経営学者であるクレイトン・クリステンセンは、こうした企業の例を「イノベーションのジレンマ」であると提唱しました。

 

イノベーションのジレンマが引き起こされる原因

市場において成功を収めてきた企業が、イノベーションのジレンマを引き起こしてしまう原因を3つ紹介します。
 

▽既存事業に依存してしまう

時代の変化によって市場のニーズは変化しますが、すでに成功している企業は既存事業に注力するあまり、新たな市場の開拓や技術開発を疎かにしてしまい、結果的に新しい流れについていけなくなってしまいます。
 

▽技術力と市場ニーズの不一致が起こる

企業は技術の向上に注力するあまり、市場が求めるニーズを追い越してしまい、消費者から見ると余分な機能が数多く搭載された高価格帯の商品が増えていき、結果的に市場から選ばれなくなってしまいます。
 

▽新規市場へ参入する機会を逃してしまう

企業は自身の売上が増えてくると、新商品の開発や他企業の買収によって、事業拡大を進めます。

しかし、新しい技術というものはまだまだ市場規模が小さいことや、利益率が低いなどといった特徴があるため、そこに資金を投下してまで技術開発や企業買収を進める必要性は薄いと感じてしまい、新規市場への参入機会を逃してしまいます。

その結果、新しい技術が成熟して市場で大きなシェアを持つようになった時に、既存製品が選ばれなくなり、シェアを大きく落とすことになります。

 

イノベーションのジレンマの具体的な事例

イノベーションのジレンマが発生した具体的な事例を挙げていきます。


▽デジタルカメラの事例

世界で初めてカラーフィルムを販売したアメリカのイーストマン・コダック社は、世界トップシェアを占め、「写真フィルム=コダック」と言われるほど世の中に浸透した優良企業でした。

その後、コダックの社内でデジタルカメラが開発されますが、経営陣は開発者に向かって「面白い、だが誰にも口外するな」と伝えたのは有名な話です。

写真フィルムで莫大な収益を上げていたコダックにとって、デジタルカメラはカニバリズムを起こしかねない一方で、性能面で未熟なデジタルカメラを軽視し、脅威と感じませんでした。

その結果、デジタルカメラの進化と共に顧客の嗜好が変化し、写真フィルムに注力してきたコダックは、2012年に経営破綻することとなりました。
 

▽携帯電話市場の事例

日本の携帯電話市場は、電機メーカーの高い技術力に加え、日本独自の携帯電話文化が発達したことで海外企業が参入できない状況を作っていました。

ところが、アメリカのアップル社によるiPhoneをはじめとしたスマートフォンの普及によって、状況が一変します。

消費者は高機能な携帯電話よりも、機能は劣っていても汎用性が高いスマートフォンを選ぶようになったことで、過去には10社以上の国内メーカーが参入していた携帯電話市場は徐々に小さくなり、現在では数社が残る程度となっています。
 

▽カラオケ市場の事例

現在のカラオケの機種は「通信カラオケ」がほとんどですが、1990年代以前は「レーザーディスク」を使った機種が主流でした。

レーザーディスクは直径30cm程度のディスクに約2時間の情報を記録できるメディアで、通信カラオケと比べて高品質な音声や映像を体感できることがメリットでしたが、新曲が配信されるまで約1ヶ月かかるという点がデメリットでした。

当時の顧客は「質の高いカラオケを体感したい」というニーズが多く、レーザーディスク業界では「通信カラオケは音声や映像の質が悪く、脅威にはならない」と考えていました。

しかし、カラオケの利用シーンが「バーやスナック」から「カラオケボックス」に移り変わったことで、利用者層も「中高年層」から「若年層」に変化し、「今流行っている曲を歌えるかどうか?」が市場ニーズになっていきました。

その結果、新曲の配信まで時間がかかるレーザーディスクは、次第に市場から選ばれなくなり、撤退を余儀なくされてしまいます。それに代わって新曲の配信が早く、収録曲も豊富な通信カラオケが大きなシェアを握るようになったのです。

 

イノベーションのジレンマの解決策

イノベーションのジレンマの原因や事例から、解決策を見ていきます。

▽時代の変化と顧客ニーズの変化を総合的に考える

新しいビジネスを考える際は、技術革新と顧客ニーズの変化を同時に考えて戦略を立てることが重要です。

たとえば、カメラ付きの携帯電話が発売された時、カメラ業界は「自分たちの方がより技術力が高い」として高を括ってしまいました。

ところが、その後に高画質カメラを搭載した携帯電話が発表され、デジタルカメラの需要は大きく減少してしまいます。

現在の市場が今後どうなっていくのかを予想しながら戦略を練ることで、将来的にも有利な状況を維持し続けられます。

 
▽小さなトライアンドエラーを繰り返して事業展開する

時代は移り変わっていくため、変化に適応し続けるためには、小さなトライアンドエラーを繰り返しながら事業を展開していきましょう。

事業の規模を抑えながらトライアンドエラーを実施することで、リスクを最小限にしつつ、多くのイノベーションを作り出す機会を得ることができます。
 

▽新たな市場へも積極的に進出する

市場ニーズが目まぐるしく変化する現代においては、既存事業の売上が好調な時にこそ、新しく誕生した市場に積極的に参加すべきです。

既存事業にこだわっていると、新たなイノベーションを創造することは困難であり、市場ニーズの変化について行けなくなってしまいます。

 

まとめ

どのような企業であっても、イノベーションのジレンマに陥る危険性を秘めています。

なぜなら、すべての顧客のニーズに応えることで技術革新が遅れてしまい、新しい技術や市場ニーズについて行けずに売上を低迷させてしまう事例があるからです。

変化の激しい市場で結果を出し続けるためには、既存事業を伸ばして顧客ニーズを満たしつつ、自社ならではの新たな技術を生み出せるように動けるかが鍵となります。

 

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