オープンリーダーシップ
オープンリーダーシップとは、必要以上に人や情報をコントロールするのではなく、適切な範囲で情報や権限を共有し、信頼関係を通じてメンバーの主体性や責任感を引き出すリーダーシップの考え方です。
インターネットやソーシャルメディアの普及によって、従業員や顧客が自ら情報を発信し、企業や社会に影響を与える機会が増えています。
そのため、企業が従来のように情報や意思決定を一方的に統制するだけでは、十分に機能しにくい場面も増えています。
こうした環境では、情報を適切に共有し、メンバーを信頼して一定の権限を委ねながら、主体的な参加や協働を促すことが重要になります。
オープンリーダーシップは、リーダーがすべてを自分でコントロールするのではなく、自信と謙虚さを持って必要以上のコントロールを手放し、メンバーが共通の目標に主体的に関われる状態をつくることを重視します。
オープンリーダーシップとは
オープンリーダーシップという考え方は、シャーリーン・リー氏による著書『フェイスブック時代のオープン企業戦略』で広く知られるようになりました。
リー氏は、オープンリーダーシップについて、自信と謙虚さを持ちながら、すべてを自分でコントロールしようとする姿勢を手放し、人々が目標達成に向けて主体的に関わるよう促すリーダーシップとして説明しています。
ここで重要なのは、「何も管理しない」「すべてを自由に任せる」ということではありません。
オープンであるためには、どこまで情報を共有するのか、どこまで権限を委ねるのか、どのようなルールの中で行動するのかといった一定の枠組みも必要です。
つまり、必要な統制を維持しながら、過度なコントロールを減らし、信頼をもとに人の力を引き出すことがオープンリーダーシップの特徴です。
オープンリーダーシップの5つの考え方
リー氏の考え方をもとにすると、オープンリーダーシップでは次のような点が重視されます。
- オープンさを支えるルールや仕組みを整える
- 顧客や従業員が持つ力を尊重する
- 情報共有を通じて信頼関係を築く
- 好奇心と謙虚さを持つ
- 失敗を学びの機会として捉える
▽オープンさを支えるルールや仕組みを整える
オープンリーダーシップは、情報や権限を無制限に開放するという考え方ではありません。
どの情報を共有するのか、誰がどこまで判断できるのか、問題が起きた場合にはどのように対応するのかなど、一定のルールや責任の範囲を明確にすることが重要です。
▽顧客や従業員が持つ力を尊重する
インターネットやSNSの普及によって、従業員や顧客は企業から情報を受け取るだけではなく、自ら意見や情報を発信できるようになりました。
そのため、リーダーが一方的に情報や意思決定を管理するだけではなく、相手が持つ知識や経験、影響力を尊重し、必要に応じて意思決定に参加してもらう姿勢が求められます。
▽情報共有を通じて信頼関係を築く
組織の目標や方針、意思決定の背景などを適切に共有することで、メンバーは「なぜこの仕事をするのか」「なぜこの判断になったのか」を理解しやすくなります。
情報を必要以上に抱え込まず、適切に共有することは、組織内の信頼関係を築くうえでも重要です。
ただし、個人情報や機密情報など、共有すべきではない情報まで開示する必要はありません。
▽好奇心と謙虚さを持つ
リーダーが「自分がすべて正しい」と考えるのではなく、メンバーや顧客の意見に耳を傾け、自分には見えていない情報や考え方があることを認識する姿勢も重要です。
「なぜそう考えたのか」「自分とは違う見方はないか」と問いかけることで、組織内に新しい意見やアイデアが生まれやすくなります。
▽失敗を学びの機会として捉える
新しいことに挑戦すれば、必ずしもすべてが成功するとは限りません。
失敗した人をただ責めるだけでは、メンバーが新しい提案や挑戦を避けるようになる可能性があります。
一方で、失敗を無条件に容認するということでもありません。
何が原因だったのか、次はどのように改善するのかを振り返り、失敗を次の行動に活かすことが重要です。
従来型の指揮統制型マネジメントとの比較
オープンリーダーシップは、従来型のリーダーシップすべてを否定する考え方ではありません。
一方で、情報や意思決定を上層部に集中させる指揮統制型のマネジメントと比較すると、次のような違いがあります。
|
指揮統制型のマネジメント |
オープンリーダーシップ |
|
リーダーや上層部に情報や意思決定を集める |
必要な情報を共有し、一定の意思決定をメンバーに委ねる |
|
指示や命令によってメンバーを動かすことを重視する |
目的やビジョンを共有し、主体的な参加を促す |
|
公式な組織階層を通じて情報を伝えることが多い |
組織内外のネットワークも活用して情報や考えを共有する |
|
リーダーが答えを持ち、判断することを重視する |
メンバーや顧客の意見にも耳を傾けながら判断する |
|
情報漏えいなどを防ぐため、情報を限定的に管理する傾向がある |
必要な情報は共有しながら、信頼関係を築く |
|
失敗をできるだけ避けることを重視する場合がある |
適切な範囲で挑戦を認め、失敗から学ぶことを重視する |
※シャーリーン・リー著『フェイスブック時代のオープン企業戦略』の考え方をもとに整理
オープンリーダーシップが注目される背景
近年は、働き方や価値観が多様化しています。
リモートワーク、時短勤務、育児・介護との両立など、同じ組織の中でも異なる環境や価値観を持つ人が働くようになっています。
また、専門的な知識や情報を、必ずしも上司だけが持っているとは限りません。
現場の社員の方が顧客の状況や最新の技術について詳しい場合もあります。
こうした状況では、トップや上司がすべてを判断し、細かく指示するだけでは、現場の知識や能力を十分に活かせない場合があります。
そこで重要になるのが、メンバーとの対話や情報共有を増やし、適切な範囲で権限を委ねることです。
メンバー自身が状況を判断し、主体的に行動できるようになることで、組織として変化に対応しやすくなる場合があります。
オープンリーダーシップは「ヨコ型だけ」のリーダーシップではない
オープンリーダーシップは、従来のトップダウン型のリーダーシップを完全に否定するものではありません。
例えば、危機的な状況で迅速な意思決定が必要な場合や、法令・安全管理など明確なルールを守る必要がある場合には、リーダーによる明確な指示や判断が必要です。
一方で、社員のアイデアを引き出したい場合や、現場の判断力を高めたい場合には、リーダーがすべてを決めるのではなく、情報や権限を共有する方が適していることがあります。
つまり、重要なのは「トップダウンか、ヨコ型か」という二者択一ではありません。
状況に応じて必要な意思決定や統制を行いながら、情報共有や対話、権限委譲を通じてメンバーの力を引き出すことが重要です。
オープンリーダーシップで重要なのは信頼と適切な権限委譲
オープンリーダーシップを実践するためには、リーダーがメンバーを信頼することが重要です。
ただし、「信頼しているからすべて任せる」というだけでは、適切なマネジメントとはいえません。
どこまで本人が判断してよいのか、何を報告すべきなのか、どのような結果を期待しているのかを明確にしたうえで、必要な権限を委ねることが重要です。
また、メンバーが失敗した際に一方的に責めるのではなく、原因を振り返り、次の行動につなげることも重要です。
こうした関わりを積み重ねることで、メンバーは自分で考え、責任を持って行動しやすくなります。
オープンリーダーシップとは、リーダーが責任を放棄することではありません。
必要な方向性やルールを示したうえで、情報を適切に共有し、メンバーを信頼して権限を委ね、その力を引き出していくリーダーシップだといえます。
日本経営心理士協会では、こうした経営や人間心理に関する考え方を経営・ビジネスの現場で活用し、成果につなげる「経営心理士講座」を開催しています。
2015年の開講以来、受講生はのべ10,000名を超え、多くの方が組織作り、人材育成、営業、顧客対応などの現場で学んだ内容を実践しています。
また、日本経済新聞をはじめとする各種メディアでも取り上げられています。

この記事の執筆者
藤田 耕司(ふじた こうじ)
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
公認会計士、税理士、心理カウンセラー
早稲田大学卒業後、監査法人トーマツに入所。独立後、日本経営心理士協会を設立。
高い成果を残す経営者・ビジネスマンの共通点を心理学的に分析し、人間心理に基づく経営・ビジネスの手法を経営心理学として体系化。経営心理学を用いて1200件超の経営改善を行う。
その成果の高さが認められ、金融庁や日本銀行でも教鞭をとり、日経新聞やダイヤモンド、東洋経済にも掲載される。







