スリーパー効果
スリーパー効果とは、信憑性が低い情報源から得た情報であっても、時間の経過とともに情報源の信憑性を忘却してしまい、情報の内容だけが記憶に残ってしまうという心理現象で、別名「居眠り効果」「仮眠効果」とも呼ばれています。
ビジネスシーンでも、営業やマーケティングで幅広く活用されています。
スリーパー効果は、1940年にアメリカの心理学者であるカール・ホブランド氏によって提唱されました。由来は敵国に潜む工作員を指す「スリーパー」という言葉からきています。
スリーパー効果の事例
事例1)雑誌記事におけるスリーパー効果
雑誌記事に記載されている情報においても、スリーパー効果が現れることがあります。
記事を読んだ時点では、雑誌という情報源の信頼性が高いかどうかで情報の真偽を判断する場合が一般的です。
しかし、時間が経過して雑誌の情報元の記憶が薄れることにより、「どの雑誌に記載されていた情報か」という点はさほど重視されなくなります。
事例2)選挙活動におけるスリーパー効果
有権者の中には、「名前を知っている」という理由だけで投票する人も少なくありません。そのため、候補者は選挙カーや街頭演説によって「自分」という情報発信を行うことは、一定の効果があるといえます。
スリーパー効果を活用した営業などの提案
スリーパー効果は、正しく使用すればビジネスにおいても活用できます。
営業や交渉がうまくいかない場合でも、スリーパー効果を利用することで状況を逆転できる場合があります。
▽商品提案
商品提案の際、信頼関係がまだ築けていない顧客にしつこくセールスを行うと嫌悪感を与えてしまいかねません。
しかし、しつこく粘らず一旦時間を置くことで悪い印象が薄れていく可能性があります。
その商品が魅力的かつ顧客の需要を満たすものであれば、後から興味や購買意欲が湧いてくることが期待できるでしょう。
▽企画を通す
自分の企画を通そうとする場合、実績がないと上司になかなか認めてもらえないことがあります。
その際はスリーパー効果を活用するのも1つの方法です。
上司に対してしつこくない程度に継続的に提案を行うことで、やがて「実績のない社員」という情報源を忘れ、企画の内容だけが上司の中で強く印象づけられるでしょう。
スリーパー効果をビジネスで活用するときの注意点
ビジネスシーンでも役に立つスリーパー効果ですが、注意点に気をつけて活用する必要があります。
▽時間をかけて説得する
せっかくスリーパー効果が現れても情報の内容が相手の記憶に残っていなければ意味がありません。
一度に長時間の説得を行うよりも、複数回に分けて何度も説得を行った方がより効果的です。
▽同じ説得方法を続けない
時間をかけて説得する際に、同じ方法で説得し続けると相手に不快感を与えてしまう場合があります。
普段対面で説得を行っているなら電話やメールでも接触してみたり、SNSやDMを活用したりと、毎回異なる手段でアプローチすることがおすすめです。
▽ブーメラン効果を生み出さないようにする
スリーパー効果を狙って説得を繰り返す場合、悪い出来事が自分に戻ってくるブーメラン効果が起こらないよう注意しなければなりません。
あまりにしつこくしたり押しつけがましい態度を取ったりすると、相手から怒りや拒絶を受けてしまうことも考えられるため、無理な説得は行わず、相手に寄り添った言動が必要です。
スリーパー効果の注意点
スリーパー効果を活用した営業アプローチでは、クライアントに時間をかけて提案することが重要です。
しかし、相手を説得しようとすればするほど、相手に反感や抵抗を生み出してしまうことがあります。
このような現象を、ブーメラン効果といいます。
例えば、親が子供に「勉強しなさい」というと子供は反発して勉強をしなくなることがあります。
営業や提案をする際には、クライアントからの反感や抵抗を生まないように留意することが重要です。
スリーパー効果を最大限に活用するためのポイント
日本ビジネス心理学会・副会長の匠英一氏は、スリーパー効果を効果的に活用するために、3つのポイントを挙げています。
- 記憶に残るキーワードを入れる
営業において、クライアントにアプローチをする場合に、膨大な情報を伝えてしまっては要点が伝わらず、クライアントがどんな内容であったか思い出すことが困難になります。
顧客が商品を想起できるように、シンプルなキーワードを繰り返し伝えることで相手の記憶に残します。
キーワードは、業界で頻繁に使用される一般的な用語や自社で考えたオリジナリティーがある造語でも効果的です。
- 同じ内容であっても表現は変えて話す
スリーパー効果では、提案を受け入れてもらうために、時間をかけてアプローチすることが大事だと述べました。
しかし、相手に同じ内容を繰り返し伝えていると、相手はまたその話かと飽きてしまい効果が薄れてしまいます。
クライアントに同じ内容のサービスを提案するときには、表現方法を変えることが重要になります。
本質的には同じことであっても、以前のデータとは異なった新しいデータや事例を使うなど表現を変えて伝えることで、説得力が増します。
こういった心理学の知識を活用して経営・ビジネスの現場を変える経営心理士講座を開催しています。
のべ5,000名以上の方が受講され、現場で多くの成果を出されております。
その成果が認められ、この講座の内容は大手企業や中央省庁でも導入されています。
詳細はこちらをご覧ください。
https://keiei-shinri.or.jp/?Glossary
では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。