サプライチェーン・マネジメント - 一般社団法人日本経営心理士協会
受講生の成果 経営心理士の活躍
写真
写真
写真
写真

サプライチェーン・マネジメント

サプライチェーンとは、原材料が調達されてから商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセスのことで、具体的には「原材料・部品調達生産物流・流通販売」といった流れとなります。

この流れを個別ではなく一括で共有・管理し、最適化を図ることを目的としています。

 

各工程の取引会社同士で連携しサプライチェーン全体を最適化できれば、これまで以上に早く顧客に商品を届けられる上に、さらなる売り上げ向上も期待できます。

また、サプライチェーン・マネジメントで需要予測を適切に行えば、在庫管理が適正化され経営を圧迫するのを防ぐことも可能です。

 

サプライチェーン・マネジメントが重要視されている4つの理由

サプライチェーン・マネジメントが重要視されているのには、さまざまな理由があります。ここでは代表的なものを4つ解説します。

 

▽企業のグローバル化が進行

グローバル化の進行に伴い、サプライチェーンも世界規模で複数の拠点を経由するようになりました。

流通の流れが複雑になるほど、より効率化が求められます。

もし流通の各プロセスを一元管理できないと、流通の流れが滞り競合他社に遅れをとりかねません。

グローバル化によって情報の流れを連携管理する必要性が増したことで、サプライチェーン・マネジメントがより重要となっているのです。

 

▽業務データのシステム化

通信技術の発展により、業務データのシステム化が進行しました。

それにより、企業活動に関するデータをまとめて管理することが容易となっています。

通常、企業の業務データは各拠点で管理されることが多く、属人性が高くなることも少なくありません。

しかしサプライチェーン・マネジメントを導入すると、特定の人にしか行えない業務が削減されます。

さらに人材配置の最適化にも繋がるため、人件費削減も期待できます。

 

▽現代の労働環境への適応

サプライチェーン・マネジメントに期待されていることの1つとして、現代の労働環境への適応が挙げられます。

現在の日本では、労働環境の変化に伴い、労働力や人材が不足しているのが実情です。

サプライチェーン・マネジメントの導入によって不要な配達や拠点の削減に繋がるため、現代の労働環境に合わせた働き方ができるようになります。

また、仕入れ量を適正化することで、物流の無駄をなくしたり配達のタイミングを最適化したりすることも可能です。

 

▽新しいビジネスモデルの台頭

販売と配送が一体化したビジネスモデルが世界的に普及したことで、家具・家電や洋服の通信販売だけでなく、飲食店のデリバリーサービスのような新しいサービスが次々に誕生しています。

そのため、従来のように商品を販売するだけでなく、配送も含めて全体のプロセスを考える必要性が出てきました。

サプライチェーン・マネジメントによって販売と配送を含めた統合的な管理体制を作ることができるため、新しいビジネスモデルに対応していく上でも重要度が高くなっています。

 

サプライチェーン・マネジメントを導入するメリット

サプライチェーン・マネジメントを導入するメリットは、発注から納品までにかかる時間が短縮されることで、商品の回転率や売上アップに繋がりやすくなる点です。

消費者が商品を欲しいと思っている時に欠品していると、すぐに販売することができず、機会損失を招いてしまいます。

反対に、過剰在庫になると、廉価販売や廃棄によって収益が悪化するリスクがあります。

サプライチェーン・マネジメントによって在庫を最適化できれば、無駄なく商品を届けられるようになり、その結果利益を高めることが可能です。

また、サプライチェーン・マネジメントは一連の業務を効率化できるため、余分なリソースを確保できれば、その時間で他の業務を当てられるようになり、人件費削減も期待できます。

 

サプライチェーン・マネジメントを導入するデメリット

サプライチェーン・マネジメントを導入するデメリットは、人材の投入やソフトウェアの購入で導入コストがかかる点です。

流通プロセス全てに関わるため、導入の際は全工程からの承認が必要になります。

また、2020年から流行した新型コロナウイルスによるパンデミックにより、需給バランスが崩れる・仕入れ先の停止といった影響を受けました。

世界的なパンデミックが再び発生するリスクも0ではないことを考慮しておくと良いでしょう。

 

サプライチェーン・マネジメントの具体的な導入事例

サプライチェーン・マネジメントは、日本を含む多くの企業で導入されています。ここでは、サプライチェーン・マネジメントの導入事例をご紹介します。

 

▽導入事例1:トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、サプライチェーン・マネジメントとして、「ジャスト・イン・タイム」という製造方式を行っています。

「ジャスト・イン・タイム」とは、車の組み立て時に部品がなくなりそうになった際に、その場ですぐ発注をかけるという仕組みです。

 

一般的な組み立て工場では、先に部品を発注し倉庫で管理する方法が取られています。

しかし、この方法では部品の在庫をこまめに管理する必要がある上に、倉庫から運搬する手間もかかるのが欠点です。

ジャスト・イン・タイムを取り入れることにより在庫管理や運搬の手間も省けるため、生産性の向上に繋がります。

また、部品や原材料の企業の近くに工場を建てているため、輸送にかかる時間とコストを抑えることが可能になっています。

 

▽導入事例2:花王株式会社

日用品メーカーの花王では、大規模なサプライチェーン・マネジメントを行っています。

全国に8個の工場を所有しているほかに21箇所の物流拠点と大量の配送車・トレーラーを保有しているため、全国8万以上の店舗に1日で1,500ものアイテムを納品可能です。

さらに花王では約20年前から、需要予測を軸としたサプライチェーンの効率化を始めたことにより、在庫や欠品の最小化と、物流・流通コストの低減を実現しており、現在では新商品であっても1週間後には需要を予測できるほどになっています。

 

▽導入事例3:ワールド&ZARA

日本アパレル業界最大手である株式会社ワールドは、スペイン発祥のブランドZARAと共同でサプライチェーン・マネジメントを行っています。

ワールドとZARAは、サプライチェーン・マネジメントにおいて「アキュレート・レスポンス(市場のニーズに的確に答えること)」を取り入れています。

例えば、シャツの白いボタンがなくなった場合、「黒いボタンに変えても売り上げが変わらないか」をいち早く判断し制作を開始します。

この方法を取り入れることにより、ワールドとZARAでは「生産から販売までを2週間で行う」というアパレル業界では考えられないスピードを実現しました。

 

サプライチェーン・マネジメントの日本における3つの課題

日本でも多くの企業が導入しているサプライチェーン・マネジメントですが、複数の課題を抱えています。

 

▽課題1:リスクマネジメント体制の構築

サプライチェーン・マネジメントはリスクも抱えているため、事前に対応できる体制を整えておくことが重要です。

たとえば、新型コロナの流行によって、生産や流通が停止し、サプライチェーン・マネジメントが成り立たなくなる事態を招きました。

今後も同様の事態が起きないとは限らず、事前にリスクに備えておくことが求められるため、プロセスごとにリスクを想定した対応の標準化を制定することが有効とされます。

 

▽課題2:グローバルレベルでのサプライチェーン・マネジメント

外国企業と競争するためにも、グローバルレベルでサプライチェーン・マネジメントを行うことが求められています。

日本は少子高齢化による労働力の不足や、新興国の台頭といった課題を抱えています。

こういった面から、日本企業だけでサプライチェーン・マネジメントを行っても、外国企業に対抗できません。競争力を維持し事業を発展させるには、日本企業に留まらないグローバルレベルでのサプライチェーン・マネジメントが必要です。

 

▽課題3:各プロセスの可視化

サプライチェーン・マネジメントを行う上では、各プロセスを可視化できる状態にすることが重要です。

可視化できていなければどこに問題があるのかも分からず、サプライチェーンの最適化は困難になってしまいます。

しかし、日本企業は現場力が強く、各プロセスのデータを集めようとしても必要性を理解してもらえないことも少なくありません。

現場では自分たちのやり方を否定されることへの抵抗感もあるため、サプライチェーン・マネジメントの理解を得にくいこともあります。

サプライチェーン・マネジメントを行うのであれば、意義を十分に伝え現場の理解を得ることが必要です。

 

サプライチェーン・マネジメントは企業経営に欠かせないものになる

日本企業の多くは、労働力・人材不足といった問題を抱えています。

現在のやり方だけでは世界の競合に対抗するのは難しいため、サプライチェーン・マネジメントが欠かせないものになることが予想されます。

サプライチェーン・マネジメントの導入には課題もあるものの、日本でも複数の企業が成果を出しているのも事実です。これらの事例を参考に、今後の企業経営を見越し、少しずつ導入を進めてみるのはいかがでしょうか。

 

こういった心理学の知識を活用して経営・ビジネスの現場を変える経営心理士講座を開催しています。

のべ5,000名以上の方が受講され、現場で多くの成果を出されております。

その成果が認められ、この講座の内容は大手企業や中央省庁でも導入されています。

詳細はこちらをご覧ください。

https://keiei-shinri.or.jp/?Glossary
 

では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

pagetop