ピーク・エンドの法則
ピーク・エンドの法則とは、「人はある出来事に対し、感情が最も高まったとき(ピーク)の印象と、最後の印象(エンド)だけで全体的な印象を判断する」という法則です。
この法則は、心理学・行動経済学者のダニエル・カーネマン氏によって1999年に発表された論文の中で提唱されました。
ピーク・エンドの法則の具体例
ピーク・エンドの法則は、日常生活の中でも多く発生しています。
▽行列に並ぶ
遊園地や人気の飲食店では、順番が来るまで長時間並ぶ必要があります。しかし、実際にアトラクションや食事を楽しめる時間はわずか10分程度しかありません。
しかし、ピークとエンドの印象しか記憶に残らないため、最終的に抱くのは「楽しかった」「美味しかった」といった前向きな感情です。
その結果、もう一度行列に並んででも足を運びたくなるといった効果が生まれます。
▽花火大会のプログラム
花火大会では、常に一定のペースで花火が打ち上げられるわけでなく、序盤・中盤とクライマックスで明確に演出が分けられています。
クライマックスで大量の花火を打ち上げることで観客にたくさんの美しい花火が打ち上げられていることを深く印象づけ、「来年もまた見たい」と思っていただくためです。
ピーク・エンドの法則の活用方法
ピーク・エンドの法則の使い方として、「全体のストーリーを組み立てる」「ピークテクニックを使う」「会話の中にスペシャル感を演出する」「要望を断る」といった4つの方法が挙げられます。
▽方法1:全体のストーリーを組み立てる
ピーク・エンドの法則を活用するためには、狙ったところにピークとエンドが来るように全体のストーリーを組み立てる必要があります。
ピーク時に良い印象を感じてもらえるよう、顧客に提供するサービスに気を配り、シチュエーションに合わせてストーリー設計を行っていきます。
▽方法2: ピークテクニックを使う
ピークテクニックとは、意外性のある言動を起こすことで、相手の興味や好奇心をそそる技術です。
ピークテクニックを使うことで相手の興味を惹けるようになり、ピーク・エンドの法則を実現しやすくなります。
▽方法3:会話の中にスペシャル感を演出する
相手の興味を惹きつけるためには、ピークテクニックの他に、会話の中でスペシャル感を演出することも効果的です。
「今回だけの限定」「あなただけに伝えます」といった伝え方をすることで、相手に特別感を与えられます。
ピーク・エンドの法則の注意点
ピーク・エンドの法則を使う際の注意点として、この法則は良い方向だけでなく悪い方向にも働くことを考慮しておかなければなりません。
他の要素がどれだけ良いものであっても、ピークとエンドに特に悪い印象が残ると、全体の評価が下がってしまうことに注意をすることが不可欠です。
ピーク・エンドの法則のビジネスでの活用法
ピーク・エンドの法則をビジネスで活用することで、顧客の心を動かしたり、信頼関係を深めたりする際に役立ちます。
▽営業
営業の場面では、セールストークに「ピーク」と「エンド」を設定することで、商品の魅力や価値を顧客に強く印象づけることが可能です。
また、「ピーク」と「エンド」を意識してサービスを提供することで、顧客に満足してもらいやすくなり、リピート率の向上が期待できます。
万が一ミスがあった場合も、「丁寧に謝罪をする」「お詫びの品を渡す」といったエンドで良い印象を持ってもらえるような対策を行うことで、全体的な印象が悪くなるのを防げるでしょう。
▽対人関係
ピーク・エンドの法則によって人に好印象を与えることができ、対人関係の円滑化につなげられます。特に、別れ際に気を配ることが大切です。
「ピーク」だと捉えるタイミングは人それぞれですが、「エンド」の印象は自分でコントロールできます。
別れ際に良い印象を与えるよう振る舞うことで、「良い人」だと印象づけられるでしょう。
ピーク・エンドの法則が活用できるビジネスシーンの例
ビジネスシーンの中でも、ピーク・エンドの法則が活用できる場面が多くあります。
▽顧客満足度を上げてリピート客を増やす
遊園地のアトラクションや花火大会では、顧客満足度を上げるために「ピーク」の瞬間に力を入れる工夫を行っています。「ピーク」と「エンド」の印象を良くすることで、リピート客の増加が期待できます。
▽営業、プレゼンの組み立てに活用する
営業やプレゼンの際、デメリットを最後に伝えると、その部分だけが強く印象づけられてしまいます。全体の中で最も伝えたい部分を熱く説明し、最後に改めてメリットで締めくくるようにすることで、受け手に好印象を与えることが可能です。
▽情報発信のストーリーに取り入れる
情報発信を行う際は、重要な部分やアピールしたい部分をピークとエンドに持ってくると効果的です。
最も伝えたい内容を相手に強く印象づけることで、商品購入や自分のファンの増加といった効果が期待できます。
ピーク・エンドの法則はビジネスのあらゆるシーンで重要
ビジネスでは、顧客満足度を上げ、サービスのリピート率を向上させることが必要不可欠です。
ピーク・エンドの法則は、サービスの提供時だけではなく、新規顧客との商談や不手際を起こした際の謝罪対応に至るまであらゆるビジネスシーンにおいて重要な法則の1つといえるでしょう。
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