エビングハウスの忘却曲線
エビングハウスの忘却曲線とは、ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱した、特に中期記憶(長期記憶)に対する時間の経過と記憶の関係を表した曲線のことをいいます。
人の記憶は「時間が経つほど忘れてしまう」ものです。
エビングハウスはこの時間と記憶の相関関係における実験を行い、
- 1日後には74%
- 1週間後には77%
- 1か月後には79%
の記憶を忘れてしまうことを、この忘却曲線にて示しました。
記憶の定着のために意識したい「節約率」
かねてより言われていることではありますが、学習したことを記憶するためには「反復して学ぶ」ことが重要である、ということをエビングハウスの忘却曲線から読み取ることができます。
エビングハウスの忘却曲線にある「節約率」とは、時間の経過によって「どのくらいの記憶が失われているか」といった記憶量の変化ではなく、その知識を再び学習する際に「どのくらい時間を節約することができるか」を指します。
記憶してから経過した時間 | 節約率 |
---|---|
20分 | 58% |
60分 | 44% |
90分 | 35% |
1日後 | 34% |
2日後 | 27% |
6日後 | 25% |
31日後 | 21% |
例えば、初めて学習する際に10分かけて覚えたことは、60分後に再び記憶する時には44%の時間を節約、つまり5.6分で記憶することができるというのが「節約率」です。
反復学習により記憶の定着にかかる時間を節約し、より早く記憶することができるのです。
ビジネスで意識したい「エビングハウスの忘却曲線」
学習や記憶は、決して学生時代だけに求められる能力ではありません。
社会人となってからも新しい学習は常に必要です。
特に管理職や人事職など人材育成担当者にとって、エビングハウスの忘却曲線は、学習プログラムやスケジュールの作成にあたって知っておきたい知識の1つです。
また、注意していただきたいのは、このエビングハウスの忘却曲線は「意味を持たない音節の記憶」に対する実験結果だということです。
つまり、全く関心のないことを学習する際の記憶の定着率や節約率はこの忘却曲線に沿ったものとなりますが、学習する側が関心のある分野においてはより記憶の定着率や節約率が高いものとなることが想定されます。
このため人材教育を行う際には、すべての学習にエビングハウスの忘却曲線を当てはめる必要はなく、適用する範囲を見極めることも重要です。
では、人材教育の際には、どんな教育をするのが良いでしょうか。
エビングハウスの忘却曲線から読み取れるポイントをまとめると次のことがいえます。
- 時間を空けずに反復学習を行うことで記憶の定着に効果を上げられること
- 興味関心のない分野においては記憶の定着率が低いこと
つまり一度の座学で一気に学習することよりも、短時間の研修を複数回設けることや、興味・関心をもって学習に臨めるように促すことなどが実践例として挙げられます。
研修やセミナーの効果を最大化させるために
記憶の定着率を高めるために「反復」が重要ということはお分かりいただけたかと思います。
複数回のセミナー・研修を実施するにあたり、以下のことを意識するとより効果的なものになるといえるでしょう。
- 節約率を意識したスケジュール設定(できるだけ短期間で次回日程を組む)
- 課題・目標設定で、反復して学ぶ機会を設ける
- アウトプットの機会を設定する(学習ではなく実践の機会を設ける)
人の記憶は薄れていくものです。
しかしながら、その仕組みを理解し、より効率的・効果的な学習設定をすることは可能です。
エビングハウスの忘却曲線を意識した教育環境や学習環境を整え、社員の知識や技能の向上に繋げていきましょう。
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では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。