カクテルパーティー効果
カクテルパーティー効果とは、カクテルパーティーのような騒がしい場所であっても自分の名前や興味関心がある話題は自然と耳に入ってくるという心理効果です。
音声の選択的聴取や選択的注意とも呼ばれており、イギリスの認知心理学者であるエドワード・コリン・チェリーによって1953年に提唱されました。
▽カクテルパーティー効果の具体例
電車の中で寝てしまっていたのに、自分の最寄り駅名がアナウンスされた瞬間に目を覚ました経験はないでしょうか。
もしくは、学校の休み時間にクラスメートが騒いでいた時でも、自分の名前が聞こえた瞬間、「自分のことを話しているのか?」と気になって、その会話の内容が入ってくるのは、カクテルパーティー効果によるものです。
▽カラーバス効果との違い
カクテルパーティー効果と似た意味を持つ心理効果として、カラーバス効果があります。
カラーバス効果とは、一つのことを意識することで、それに関する情報だけが自然と目に留まりやすくなる心理効果です。「視覚の類似効果」とも呼ばれています。
カクテルパーティー効果は「聴覚からの情報の選択」を指しますが、カラーバス効果は「視覚からの情報の選択」を指す点に違いがあります。
カクテルパーティー効果の仕組み
耳には多くの音が聞こえてきますが、聞こえた音をすべて情報として認識しようとすると、情報の量が膨大となり、脳が処理しきれなくなってしまいます。
そこで人間の脳は、耳から入ってきた情報のうち、自分にとって必要な情報であるかを瞬時に判断して選び分けているのです。
こうした脳の働きによって、たとえ周囲が騒がしい状況であっても、自分にとって本当に必要な情報を的確に判断し、聞き分けられるようになっています。
カクテルパーティー効果の実証実験
カクテルパーティー効果は、提唱者であるエドワード・コリン・チェリーが行った実証実験だけでなく、アメリカの心理学者によって人間関係に応用した実験も行われています。
▽提唱者による実証実験
聴覚についての研究を行っていたエドワード・コリン・チェリーは、カクテルパーティー効果を実証するために以下の実験を行いました。
実験の内容は、被験者に左右の耳で、それぞれ異なる情報を同時に聞いてもらうというものでした。
1回目の実験では、被験者にどちらか一方から聞こえる音にだけ注意を向けるように指示します。
すると被験者は、注意を向けていなかった方の音は聞き取ることができませんでした。
2回目の実験では、1回目の実験で注意を向けていなかった方の耳に、被験者の名前を流しました。
そうすると被験者が意識する方の耳が変わり、自分の名前を聞き取れていたのです。
この2つの実験から、人間の脳は自分が関心のある音声情報を無意識に選択肢し、関心がない音声情報は聞き流していることが判明しました。
▽アメリカの心理学者による実証実験
アメリカの心理学者であるクリス・クラインは、カクテルパーティー効果を応用した実験を行いました。
実験の内容は、男性と女性のペアの被験者を集めて、以下の2グループに分けて会話をしてもらうというものでした。
・15分間、自由に会話をしてもらう
・15分間の会話の中で、相手の名前を何度か意識的に呼んでもらう
すると、後者の相手の名前を複数回呼んだグループの方が、相手に対して親しみを持ったという結果が出たのです。
実験の結果、相手の口から自分の名前が出てくると、カクテルパーティー効果によって相手により意識を向けるようになりました。
その結果として、相手に対する親しみも深まったと考えられています。
カクテルパーティー効果をビジネスで活用する方法
カクテルパーティー効果は、ビジネスを行う場やステークホルダーとのコミュニケーションの場面で活用できます。
▽①ターゲットを明確化する
カクテルパーティー効果を活用するには、相手の名前や相手が興味関心を持つことを伝える必要があります。
ターゲットが明確化されていない漠然とした宣伝文句では、カクテルパーティー効果が発揮されず、聞き手に「自分に関係ない情報」だと思われてしまいます。
そこで、「新社会人になられた皆様へ」「〇〇市にお住いの方へ」などとターゲットを限定することで、相手に「自分のことだ!」と認識させることができます。
▽②相手の興味を持つ単語を使う
カクテルパーティー効果を引き出すために、相手に興味を持ってもらえそうな単語を意図的に使用しましょう。
たとえば、家族向けの一戸建ての宣伝であれば、「育児」「庭付き」「家族団らん」などのように、購入者層の興味を引きそうな単語を入れることで、漠然と宣伝するよりもずっと相手の目に留まりやすくなります。
▽③相手の名前を意識的に呼ぶ
電話やメール、面と向かった商談など、ビジネス上のコミュニケーションの場面でも相手の名前を意識的に呼ぶことで、カクテルパーティー効果を引き出せます。
特に知り合ったばかりの人や、しばらく会っていなかった相手に対して、しっかりと名前を呼ぶことで、「ちゃんと覚えてくれていた」と特別感を感じさせたり、こちらが相手に興味を持っていることを印象付けたりすることができます。
さらに、名前を呼ぶことで相手は「自分に対して投げかけられている」と感じ、会話の内容を一層意識してもらえます。
クレーム対応のコールセンターでは、電話での会話の中で相手の名前を呼ぶ場合と呼ばない場合とでは、終話後の結果が大きく異なるようです。
そのため、謝罪をする場合は単に「申し訳ございません」ではなく、「申し訳ございません、〇〇様」としっかりと相手の名前を呼ぶようにしましょう。
相手の怒りの収まり方が早くなり、クレームも円満に解決するケースが多くなります。
カクテルパーティー効果を使うのが苦手な人の特徴
人の能力には個人差があるのと同様、カクテルパーティー効果も人によって効果に強弱があります。
特にカクテルパーティー効果を使うのが苦手な人の特徴は以下の3点です。
▽五感が敏感過ぎる
五感が敏感過ぎる人は、他人と比べてより多くの情報を得ているので、他人が気にならないような小さな音も気になってしまったり、情報の重要度に関係なく、どの人の声であっても同じように聞こえてしまったりします。
▽感覚が鈍過ぎる
感覚が鈍過ぎることで、必要な情報を集められず、情報を正しく認識できなくなってしまいます。
▽選択的注意力が低い
注意力が低い人は、その人の意識がさまざまな場所に移ってしまうため、意識を向ける対象が定まりません。
その結果、落ち着きがなく注意力が散漫になり、カクテルパーティー効果が薄くなってしまいます。
カクテルパーティー効果を使いこなすための訓練法
カクテルパーティー効果は特に意識しなくても働く心理効果ですが、鍛えることでその効果を高めることができます。
▽騒がしい場所で人の話を聞いてみる
情報を聞き分ける能力を高めたい場合、飲食店など人が多く集まる場所に出向いて、特定の人の話に耳を傾けるようにしましょう。
こうした一部の音に意識を集中させる特訓を行うことでカクテルパーティー効果が高まり、他の音が弱まって自分の聞きたい音や情報だけを聞き取る能力を鍛えることができます。
▽音楽を聴くときは特定の楽器に注目する
騒がしい場所に足を運ぶことが難しい場合は、音楽を聴くときに特定の楽器に注目する訓練法もあります。
音楽を聴く際に、たとえばドラムやギターといった特定の楽器に集中して、その音だけを聴き分けるようにしてみましょう。
慣れてくれば、意識を集中させている楽器の音だけがはっきりと聴こえるようになってきます。
カクテルパーティー効果でビジネスを加速させよう
カクテルパーティー効果を活用できれば、ターゲットに合わせて効果的に集客を行うことが可能になります。
全方位的な宣伝メッセージでは、相手が元々興味を持っていたサービスや商品でない限り、相手の意識に上げてもらうことは困難です。
たとえば、病院の待合室で、自分とは違う名前が呼ばれても聞こえてこないのと同じで、せっかく情報が入ってきても素通りになってしまいます。
これではせっかくお金や時間といったリソースを割いても、ビジネスの成功には繋がりづらくなってしまいます。
一方でカクテルパーティー効果を活用すれば、漠然と宣伝するよりも購入者の興味を引くことができ、あなたのビジネスをさらに加速させることができるでしょう。
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では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。